離婚専門行政書士が教える‐男女トラブルの実態と対策
今回は、離婚から少し離れて「男女トラブル」についてお話をさせて頂きます。
皆さんは、「男女トラブル」というとどんなことを思い浮かべますか?
代表的なものは、「ストーカー」「婚約破棄」「妊娠に関係したもの」などでしょうか。
「婚約破棄」「妊娠に関係したもの」については、比較的「離婚」と同じように、法的に解決することができます。
しかし、「ストーカー」については、一概に「法律」で解決する事が難しい場合も多く、
また、「予防」をすることが何よりも重要だと、私は考えています。
ですので今回は、この「ストーカー」についてお話を進めていきます。
まず、ストーカーとは、次のような行為をする人のことを指します。
- つきまとい・待ち伏せなど。
- 監視している、いつも見ているなどと告げる行為。
- 面会・交際の要求、強制。
- 乱暴な言動。
- 無言電話・連続電話、メール。
- 汚物などの送りつけ。
- 名誉を害する行為。
- 性的羞恥心を害する行為。
警察庁の調べによると、2015年ストーカー被害数2万2823件と年々増加してきています。
そして、加害者の6割は元交際相手もしくは元配偶者といわれています。
このような状況もあり「既にストーカー被害にあっている方」への情報はかなり浸透してきていると思います。
数々の痛ましい事件を経て、警察や裁判所の対応も徐々に適切になってきています。
そのなかで私としては、「ストーカーに対する法的処置」と同じくらい「ストーカーにならない為の情報も重要だと思っています。
したがって「ストーカーにならない(させない)為にどうすればよいのか?」について特に深堀していきたいと思います。
ストーカーというと一般的には、お付き合いをしていた相手が、別れたのちにストーカーになってしまう、というものだと思います。
私が、職務上よく目にするのは、離婚後に一方が復縁を求めてストーカーになるというケースです。
離婚には渋々応じたものの、やはり一方への未練があり復縁を迫ってしまうのです。
子供のことを気にするふりをして相手に迫ったり、無断で家に上り込んだり、深夜に何十回もメールや電話をするケースも珍しくありません。
もとは結婚までした間柄であることもあり、初期段階からかなり遠慮のない行為が見られるのも特徴の一つです。
さらに、このケースですと、被害者には子供の父(母)親を犯罪者扱いしたくない、という気持ちが生じるため、通常の場合よりも対応が難しいことが多いのです。
その意味でも、どうすれば「ストーカーにならない(させない)為にどうすればよいのか?」が重要なのです。
まず、人が付き合っていた(結婚していた)相手に別れを切り出された時に、どのようにショック状態から落ち着きを取り戻していくのかをみてみましょう。
(1)別れの事実を認められない段階
↓
(2)諦めきれず、相手に対し強い怒りを感じる段階
↓
(3)どうしていいのかわからず混乱する段階
↓
(4)どうにもならないとしって絶望する段階
↓
(5)相手を失った悲しみが和らぎ、自身の生活を立て直し始める段階
一般的には、おおよそこのような段階を経て、徐々に悲しみから立ち直っていけます。
しかし、ストーカーになってしまう人は、何らかの要因により(5)に移行できず、(1)から(4)をグルグルと巡ってしまいます。
この過程の中で、前述のようなストーカー行為に及んでしまう人が出てくるのです。
ストーカー行為に及ぶ人には様々な要因があり、精神科医の影山任佐によれば、以下のように分類できるといわれています。
1.誇大自信過剰型 … 好かれているはずだと思い込む。
2.未練執着型 … 別れた恋人や配偶者にストーキングする。
3.ファン型 … 有名人にストーキングする。
4.妄想型 … 一方的な恋愛感情や被害者意識。
5.中核型 … 相手を支配しようとしたり、相手の心の中に『巣くおう』とする。
いずれの型にも共通する要因としては、精神的に未熟であること、自己中心的であることが挙げられます。
実際にあったケースでは、結婚当初は非常に仲のいい夫婦でした。しかし、子供が産まれると、徐々に旦那さんの様子が変わってきました。妻が子供にかかりきりになるのが気に食わないのか、暴力的な言動が目立ち始めます。
ある日ついに、旦那さんが妻に激しく暴力をふるいました。すぐに、妻が警察を呼んだため事なきを得ましたが、この件が原因で2人は離婚をしました。最後は、旦那さんも納得していたので、これで無事に解決かと思われました。
しかし、別れてしばらくすると「復縁したい」というメールが来るようになりました。
しかも、尋常ではない数です。一日に80件~100件ほどのメールが毎日届きます。
メールを変えなさいでいると、今度は電話が鳴りやまなくなりました。深夜に2時、3時にです。
妻は困り果てましたが、子供は元旦那に懐いており、メールや電話を拒否すると、子供から父親を奪うことになりそうで、じっと耐える日々を送っていました。
しかし、我慢も限界に達し、警察や周囲の後押しもあり、電話やメールを拒否します。
すると今度は、急に自宅や職場に現れるようになりました。
身の危険を感じた元妻は、警察に通報しました。警察の協力もあり、元旦那が姿を見せることはなくなりました。
しかし今度は、元旦那は養育費を支払わないという暴挙に出てきたのです。
幸い、このケースでは離婚時に公正証書を作成していましたので、元旦那の給料の差し押さえをすることができたのでよかったのですが、公正証書がなければかなり深刻な状況になっていたところです。
このときも元旦那は、「反省しているが、俺をこんな風にしたのはお前だ」「お前さえ、俺のところに戻ってくればすべてはうまくいくんだ」「このままの状態なら、俺は子供には会わない。子供がかわいそうじゃないのか。」という、自己中心的な言動を繰り返していました。この元旦那は、近年多くみられる「中核型」の典型でした。
さて、ではこのような恐ろしいストーカー行為を自分がしないようにするにはどうしたらいいのでしょうか?
それには、「あ、今の自分の思考は少しまずいな。。」と感じたら、下記の5つの視点で振り返ることが効果的です。
ストーカーにならないための5つの視点
1、誰でも悪条件が重なれば、問題行動に歯止めがきかなくなる可能性はある。
自分はストーカー行為に無縁だと過信しないこと。
2、明るい未来を自ら創出するように努め、精神的に追い込まれないようにする。
仕事や勉強などを後回しにせずに、前もってきちんとこなしておく。
3、ストレス対策(充分な睡眠、栄養のバランスの取れた食事、定期的な運動など)
をしっかり実践する。
4、ストレスを感じたら、家族や昔からの友人などに勇気をもって相談する習慣をつける。
5、万が一、自身の問題行動がエスカレートしていく場合、外部からストップをかけてくれるように依頼をしておく。
【参照:メンタルヘルスガイド 中嶋 泰憲】
上記をご覧いただいてお分かりのように、すごく特別なことは一つもないですよね。
ポイントは「自分もストーカーになりえるという緊張感」と「ストレスコントロール」です。
逆に、相手をストーカーにさせない方法は、相手に上記のような環境を用意してあげるもしくは用意できるように協力してあげるということになるでしょう。
本人が聴く耳を持たない場合は、ご両親や共通の友人の協力を得ましょう。
最後に、念のために「残念ながら相手がストーカーになってしまった場合の対策についてポイントだけ触れておきます。大切なことは「相手を説得しようとしない。」「一人で解決しようとしない。」「二人で会わない。」「警察や弁護士を上手に活用する。」ということです。
ストーカー行為は、被害者はもちろん、加害者にとっても大変不幸なことです。
もし、この記事によって、ストーカー被害者やストーカー加害者が一人でも減ってくれればこれほどう嬉しいことはありません。
※当記事は、調査会社様より依頼を受けて作成したものです。