【離婚】養育費を確実に支払ってもらうために必要な7つのこと

『養育費を確実に支払ってもらうために必要な7つのこと』

今回は、実際に私がお客様からご相談を受けることが多い、「養育費」についてお話していきたいと思います。

 

その中でも、特に「支払いを受ける方」の目線で、確実に支払ってもらうためにどのような工夫が必要か?ということについて掘り下げてまいります。

【養育費とは】

 養育費とは、ご存知のとおり子供の養育に要する費用のことで、離婚の際には子と別居する親が子供に対して支払う金銭のことを指します。

 現実的には、養育費は旦那から妻に対し支払われることが多いですが、旦那が親権を持つ場合には、収入によっては妻が養育費を支払うことも珍しくありません。

 養育費の支払いは、親の義務であると同時に、子の権利でもあります。従って、もし父母間で養育費の授受をしない旨の合意があったとしても、子もしくは法定代理人である親から養育費の請求があった場合は、原則としてこれを拒むことはできません。

 

 【よくある相談】

 よく質問をお受けするのが、「勝手に子供を連れて家を出てしまったので、養育費は請求できないですよね?」とか、逆に「勝手に家を出ていった妻と子に、養育費なんて払わなくていいですよね?」といったことがあります。

 それぞれの気持ちはわからないではないですが、どのような事情があっても、「親が子を養育する義務」すなわち「養育費を支払う義務」が親にあることには変わりがありません。

 例え、支払い義務者である親本人に支払いの意思がなかったとしても、調停等の方法により養育費を請求し、支払わせることができる可能性が高いです。

 

【養育費支払いの実態】

しかし、実際には養育費を支払ってもらっていない、シングルマザーの方も多くいらっしゃるのも事実です。厚生労働省の調査によれば、離婚後3年経過した時点で養育費を継続的に受け取っているシングルマザーは、数十%程しかいません。

これでは、子供に十分な教育を受けさせることはもちろん、安定した生活さえままなりません。様々な事情により、養育費を受け取れていないシングルマザーの方は、昼夜を問わず働き、必死に生活費を稼がざるを得ません。その結果、子とのコミュニケーションが希薄になり、非行など、様々な問題が生じます。養育費が支払われないことにより、子が経済的だけではなく、精神的にも大きな負担になっている現状を、なんとかしなければいけませんし、少しでもそのような子供たちが減るように、以下で具体的な方法をお話していきます。

 

『養育費を確実に支払ってもらうために必要な7つのこと』

①公正証書の作成

養育費の取り決めを「口約束」で済ますことはあってはなりません。

理由は、大きく2つです。1つ目の理由は、強制執行などの法的な手段を行う場合の負担が大きくなるということです。養育費の額等で争いがある場合には、数ヶ月のあいだは養育費が支払われないこともあります。2つ目の理由は、未払分の請求が困難である事です。

養育費の額がきちんと決定していないと、未払分があってもその額を確定することができません。口約束では、養育費額も曖昧であることが多く、未払分に関しては泣き寝入りになることがあります。

 従って、離婚の際に養育費について取り決める際には、公正証書の作成をお勧めしています。日本においては、約95%の夫婦が、協議離婚(裁判所の関与を受けないで、当事者の話し合いによる離婚)といわれていますので、協議離婚の場合には、全国にある公証人役場にて、養育費を含む離婚条件を記載した離婚協議書を公正証書にすることになります。夫婦間で、離婚協議書が作成できないもしくは不安がある場合には、行政書士等の契約書作成の専門家に作成を依頼することもできます。

 公正証書を作成することにより、養育費の額や支払い期間が確定するのはもちろんのこと、万が一養育費の支払いが滞った場合に、支払い義務者の給料を差し押さえる(強制執行)が比較的容易にできるようになります。

その他には、離婚調停を経て調停調書を作成する、裁判離婚を経て判決が下される、といった方法でもほぼ同等の効果が得られます。

②勤務先、住所、連絡先の把握

 公正証書を作成したとしても、残念ながら養育費の支払いを確実にすることはできません。前述したとおり、公正証書を作成する大きな目的は、「強制執行を比較的容易に行うこと」です。しかし、強制執行をするためには、養育費支払い義務者である者の勤務先や従者などの情報が必須になります。ですので、普段から上記のような情報について把握できるような関係性が必要になります。

 また、故意に行方をくらます可能性がある場合には、「探偵等に行方調査を依頼し、その調査に要した費用を全額その者に負担させる」といった趣旨の特約をすることも有効です。

 

③財産の把握

 強制執行をする際に、最も容易なのが給料の差し押さえです。しかし、支払い義務者が無職で収入がない場合や、自営で収入の特定ができない場合もあります。

その場合には、預金や動産、不動産の差し押さえも検討することになります。

 ただし、それらの差し押さえを行うためにはある程度の特定が必要であり、預金であれば、「銀行名」「支店名」、車両であれば「メーカー名」「車種」、不動産であれば「地番」等の情報が必要になります。支払い義務者の収入が不安定な場合には、そういった他の資産についての情報を把握しておくことも大切です。

 

④連帯保証人

 もし、支払い義務者の支払い能力に疑いを持たざるを得ない具体的な理由がある場合(転職を繰り返している、借金癖がある、支払いを止める事を匂わす発言をしている等)には、養育費の支払いに関して、連帯して義務を負ってもらう、いわゆる連帯保証人を付けることもあります。通常、養育費の連帯保証人になれるのは、支払い義務者の両親などに限られます。しかし、こうすることで「両親に迷惑はかけられない」という意識が働ききちんと支払いを継続されているケースもあります。

 

⑤生命保険の利用

 養育費の支払いが止まる理由は、不払いだけではありません。その理由の一つが「支払い義務者の死亡」です。支払い義務者が死亡した場合は、原則としてそこで養育費はストップします。前述した連帯保証人を付けていた場合でも、特約がない限りは連帯承認に養育費を請求することは困難になります。

 そこで、支払い義務者死亡のリスクを回避する方法として、生命保険を活用することもあります。たとえば、「少なくとも養育費の支払い期間満了までは、保険金受取人を子にしておく」などといった特約を設ける方法も考えられます。

 

⑥一括支払いの検討

 養育費は一般的には、支払い期間満了まで毎月支払われるものです。しかし、だからこそ途中で支払いが止まるというリスクが発生します。

 したがって、もし養育費を一括で支払ってもらえるのであればこんなに安心なことはないわけです。もちろん、養育費を一括で支払うともなれば数千万円の現金が必要なこともありますので、一般的ではないことは確かです。しかし、一括で支払うことを条件に総額を減額をするなどといった交渉の結果、支払総額が減るのであれば親や銀行等から借入をしてでも支払ってしまおうという方もいらっしゃいましたので、一考の価値はあると思います。

 

⑦子供との関係性、父母の交流

 最後に、一番重要と言っても過言ではない事項があります。それが、支払い義務者と子供の関係性です。ここで、養育費を支払う側の気持ちになって欲しいのですが、養育費の支払い義務があるとは言え、月々数万から十数万円の支払いをするのはかなりの苦痛です。

 それでも、可愛い子供のためと思い歯を食いしばって支払っているのです。

そのような状況で、例えば約束した子供との面会がなされないですとか、子供が自分になつかないということがあると、支払うモチベーションは急激に下がってしまい、その結果支払いが止まることになります。

もちろん、親である以上このような考え方は身勝手で無責任であることには異論はありません。しかし、支払い義務者も親である前に人間です。義務とは言え、支払いを続けるためにはモチベーションを保てるように応援してあげる必要があるのです。

 具体的には、「子供から褒めさせる」「活躍の場をつくってあげる」「子供が自然と尊敬するような環境を作る」などです。

 こういった、日常的な工夫が養育費を頑張って支払っている支払い義務者のモチベーションにつながり、結果として養育費がきちんと支払われるばかりか、親子関係も良好になり、教育にも良いと私は思います。

 

【まとめ】

養育費の支払いは、法律で定められた義務です。故意に支払いをしない者に対しては、毅然とした対応が必要です。ただ、「義務だから支払って当然」というスタンスで臨むよりは、「いつも、お仕事お疲れ様。ありがとう。」という気持ちでいたほうが、結果としてはp互いにハッピーになると思います。

皆様の今後の参考になれば幸いです。

 

次回は、『慰謝料を確実に支払ってもらうために必要な7つのこと』というテーマで、もし、ご自身の旦那(妻)が浮気をしている場合に必要な心構えや法的な処置について詳しくお話できればと思います。是非楽しみにしていてくださいね。

※当記事は、調査会社様より依頼を受けて作成したものです。